毎日の離乳食は、赤ちゃんの五感をフル刺激できるチャンスの時間
目次
赤ちゃんにとっての「食事」の意味
大人にとっての「食事」、赤ちゃんにとっての「食事」
みなさんは、何のために食事をしますか?
大人の皆さんにとって、毎日の食事は、欲求(空腹)を満たすためのものであったり、活動するためのエネルギー(栄養)を得る為のものであったり、もしかするとストレス発散や、美・アンチエイジング、体づくりの為といった目的の方もいらっしゃるかもしれません。
大人になるにつれて、私たちは本能よりも理性で物事を考え、行動をするようになります。
お腹がすいたという本能的欲求に加え、最近太ってきたから糖質を抑えていこうかな、とか試験前や大事なプレゼンの前だからしっかり食べておこうとか、理性の方が優位となって、食べるものを自分で選択していきますね。
それに対して子供達、特に乳児期~幼児期にかけての赤ちゃんは本能で行動します。その為「食事」の目的は単純明快です。
それは食べることが楽しいから。
美味しいから。
要はそこに「興味」「好奇心」という感情が働くからです。
せっかく作ったご飯も、赤ちゃんが食べてくれなければ意味がありませんよね。つまり、赤ちゃんが進んで食事をしてくれる為には、そこに好奇心を刺激する何かしらの工夫が必要であるということです。その為に何が必要か。少しずつ見ていきましょう。
五感を刺激する「見て、触れて、味を覚える」
生まれたばかりの赤ちゃんの五感は、とてもぼんやりしているそうです。
成長していく過程の中で、五感(味覚、聴覚、嗅覚、視覚、触覚)が刺激されることにより、脳が発達し、様々な感覚を覚えていきます。
「食事」は、その五感全てに語り掛けることのできる、とても大事な時間といえます。
味覚 ~色々な素材の味を楽しもう~
美味しいと感じる味覚は、今まで食べてきたものを元に作られていきます。
塩分の多いものや、添加物の多いものばかり食べていると、それが普通の「美味しい」になってしまいます。
赤ちゃんの頃に食べるものはなるべく薄味で、とよく言われるのは、まず素材の味をしっかりと覚えて欲しいからです。
例えば、ある出汁を使った実験があります。
- 1つはカツオと昆布で出汁を取ったもの
- もう1つは、粉末の出汁をお湯で溶かしたもの。
それぞれ、どちらがどのコップに入っているか分からない状態でそれを飲み、美味しい方はどちらか回答する実験です。
さて、皆さんが美味しいと感じるのはどちらの出汁だと思いますか?
実は、多くの人は粉末の出汁の方を美味しいと答えます。カツオと昆布で取った出汁の方は、香りが強くはっきりとした味がしますが、対して粉末の出汁は、万人受けするように、柔らかく美味しく作られているからです。その為、粉末の出汁に慣れている人の味覚は、人工的に作られた方の出汁を美味しいと感じるのです。
今は簡単に調理の出来る便利な調味料等が沢山出ていますので、忙しい合間にお料理をする際にはよく使ってしまいますが、赤ちゃんに対しては、まずは本物の味(素材の味)を味わわせて、それぞれの素材の「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」「旨味」の違いを楽しめるようにしてほしいと思います。
いずれ大人と同じものを食べるようになる時まで、調味料は素材の味を隠してしまわない程度のごく少量にとどめて置いてください。
嗅覚と視覚 ~色彩豊かな食卓を~
料理は目で見て、香りで楽しむとも言いますね。テーブルに座ったときに、パッと鮮やかな色が目に飛び込んできたらそれだけでも美味しそうに見えます。また香りについては上記で述べましたように、赤ちゃんには素材自体の風味を感じてもらえるようにしましょう。
例えば、食材で色を取り揃えてみましょう。
赤色、黄色、緑色、黒色、白色、様々な色の食材がありますね。
これらの「色」と「栄養」には密接な関係があり、実は細かい栄養のことが分からなくても、ざっくりと食材の色をそろえるだけで、ある程度栄養面においてのバランスが摂れてしまうのです。
それでも毎食これらの色を揃えようと思うと大変です。そんな時は、手っ取り早く食材以外の物で彩りを作ってしまいましょう。
ランチョンマット、カトラリー、食器などを活用すれば、あっというまに彩り豊かな食卓になります。特に赤やオレンジ、黄色などの暖色は食欲にプラスに作用するとされています。
このようなカラーを上手く組み合わせることで、赤ちゃんの興味をぐっと引くことが出来ます。
聴覚と触覚 ~語りかけのコミュニケーション~
食事中は、「これは何かな?」「上手に食べられたね」といった様に赤ちゃんの興味が食べ物に向くように語りかけてみてください。
途中で動き出してしまう赤ちゃんを制止する為に、テレビや携帯で動画などの映像を見せながら食べさせるという、所謂「ながら食べ」をさせている方もいらっしゃるかもしれません。
大人しくパクパクと食べてくれれば嬉しいですが、これでは赤ちゃんの五感は全て映像に取られてしまい、せっかくのご飯の味や香りは頭にインプットされません。
これでは、ますます赤ちゃんが食べ物に対する興味をなくしてしまいます。なるべく、食事中はご飯に意識を向けるよう誘導するようにしましょう。
もう一つ、触覚は料理に手を突っ込んだり、手づかみ食べをしたりすると刺激されます。
舌で感じる食感もまた一つの触覚の刺激です。
柔らかい、硬い、熱い、冷たい、ツルツル、ザラザラ、四角い、丸い
自身の手で、舌で、感じることで、赤ちゃんの脳は様々な感じ方の違いを少しずつ覚えているのです。
食感を変えるためには、2つの方法があります。
一つは、調理法を変えることです。
料理には蒸す、焼く、煮る、炒める、和える、揚げるなどの異なる方法がありますが、これらを変えるだけで食感は大きく変わります。
離乳食がある程度ステップアップしてきたら、なるべく1回の食事で出すおかずの調理法は被らないようにしましょう。
例えば、主菜が焼き魚であれば、和え物と煮物を副菜にもってくる。など、異なる調理法の料理を組み合わせるようにして下さい。
これは大人の食事でも同じです。
2つめは、切り方です。
具材を大きく切ったり、細かく切ったり、型抜きをしたりと切り方で食材そのものの形を変え、なるべく色々な感触を楽しめるようにしていけば、バリエーションも広がります。
食環境を整えるために
さて、ここまでで、赤ちゃんが食事を楽しむための方法をご紹介してきました。
大事なことは
- 赤ちゃんの五感を刺激して、食事に興味をもたせること
- 食べ物の素材自体の味、風味を大事にすること
- 彩り豊かな食卓を意識すること
- コミュニケーションをはかること
- 調理法や切り方などを工夫して食感に変化を出すこと
これらのことを、是非意識して頂きたいと思います。赤ちゃんは、自分が食べるものを自分で選択する事はできません。
パパママ達の作る食環境の中で、子供は育っていくのです。
その責任があることを、しっかりと認識して頂きたいと思います。
もっとも、毎日、毎食これらを実行してくださいというのは、おそらく多くの方にとって現実的ではありませんね。
現在では様々なライフスタイルのご家庭があります。
共働きやひとり親の世帯も多い中で、毎日目まぐるしく時間が過ぎ、料理は安価で、手軽で、時短に出来るものが最優先という場合もあると思います。
私がお願いしたいのは、1日のうちの1回、もしくは1週間のうちの1日、私がここでお伝えしたことを思い出して頂きたいのです。
1項目からでも構いません。
彩りに一つ、ゆでた人参を星形に切って乗せてみる。
そう言った簡単に出来る事一つからでも構いません。
ご家庭でのライフスタイルに合わせて、作る側も無理なく楽しく取り入れて頂きたいと思います。
完璧である必要はありません。大事なことは、正しい知識を知っているかどうかです。
大切な我が子に、栄養を摂って欲しい。沢山食べて欲しい。自分の作った料理を美味しいと言ってほしい。
その想いは皆さん共通のはずです。それならば、一度赤ちゃんの視点に立って考えてみてください。
赤ちゃんにとっての「食事」は楽しい、美味しい、面白いものであり、大好きなママやパパとのコミュニケーションツールであるということ。
私は、そうであってほしいと思います。
その為に私達親に出来る事は何か。是非気楽に、取り組んでみてください。
ライター:尾茂 友美
食育スペシャリスト / 食生活アドバイザー / ジュニア野菜ソムリエ
1歳半のやんちゃな息子に育児奮闘中。
食育や食生活アドバイザーとして活動しています。
お子さんの元気で健康な体を作る為に役立つ情報を、
ママさんパパさんへ分かりやすく
お伝えしていきます。
ママ目線のお役立ち情報は「オヤサポ」にも掲載中 ▶https://oyasapo.jp/learn/5116/